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「IC-820」 受信広帯域化(1)
「IC-820」 受信広帯域化(2)


[二〇二一年十月八日]
IC-820 受信広帯域化(1)
 入力段ローパス・フィルタの実験・試作   

先般、"ハム用VHF通信機"に、"アップ・コンバータ"を付加して、"HF受信機"に変身させることが出来た。
それに気を良くして、追加で、幾種かの"VHF通信機の不動ジャンク"を買ってみたが、ちゃんと修理が出来なくて、殆どが使えず。
偶々、(私が、殆ど使わずに、)温存してあった昔のVHF/UHF無線機「ICOM IC-820」を調べたら、136.0〜173.9MHzの広い範囲が受信出来ることが分かって、これの広帯域化に興味が湧いた。(図2[クリック]

"アップ・コンバータ"の局発を、140MHzにすれは、実に、−4MHz〜33.9MHz(?!)の広範囲をカバー出来るはず。(140MHzにする理由は、ちょうどその「水晶発振器」が手元にあるから)
そして、1MHz桁の表示は、受信周波数を直読出来る。
尤も、10MHz台、100MHz台は、表示値から"140"を引き算して読まなければいけないし、果たして100KHz以下の長波帯も受けられるのか?って疑問も湧くし、0MHz以下は、多分折り返すだけになるだけ、だろうけど。(苦笑)

"物は試し"で、「IC-820」に付加する"アップ・コンバータ"を自作してみることにした。
まずは、入力部の"ローパス・フィルタ"を、「nanoVNA」で観察しながら、作ってみた。(図1
目標は、カットオフ周波数は35〜40MHz辺り、140MH〜150MHzでの減衰量は-40dB以下にしたい。
特性は、厳密ではなくても、ほぼ満足出来れば良し、とする。
使用材料は、有り合わせのもの(つまり、ジャンク箱にあるものか、入手容易な市販品)だけで間に合わせること、とした。

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+++ L,C値の探索・設定 +++

(実は、色々解説記事を拝見して"バターワース型"、"チェビシェフ型"など特性の違いは分かったが、具体的にどのように造り分けするのかが、未だに良く分からず)
兎に角、コンデンサー3個、コイル2個で、どんな特性のものが出来るのかは、実験で確かめるのが、一番早い!(図3

シミュレーション値の算出は、「計算サイト」のお世話になった。感謝!
コイルは、予め"空芯コイル"のおよその値を調べた上で、約1oφのエナメル被覆(?)銅線を、ボビンに8回巻いて作った。(値は未測定だが、約0.3μH位。尚、ダスト・コアは、有効では無かったので、外した)
コンデンサは、手持ちのものの中から、近い値のセラミック・コンデンサ(C1=22pF表示)、古いチタ・コン(? C2=180pF表示、C3=180pF表示)を拾い出して来て、使った。

nanoVNA」で見た結果は、およそ40MHz辺りから徐々に落ちている。(図4[クリック]
通過帯域内にリップルがあるので、多分、"チェビシェフ型"になっているのだろう。
(コンデンサの値を色々替えていると、その中には、"バターワース型"になるケースもあった。実用的には、どっちになっても構わないのだが)

この特性でも使えるとは思うが、もう少し極小点を高い方にシフトするには、巻き数を減らした方が、良いかもしれない。


+++ 既製品コイルを利用 +++

私のジャンク小箱内に、小型の既製品の"疎ピッチ・コイル"が沢山あったので、それを使ったらどうなるかを調べた。
コイルは、巻き線数の少ないのが1個(7t ボビン青色)、多い(8t ボビン白色)のを1個使った。
コンデンサの値は、C1=20pF、C2=120pF、C3=68pFと(シミュレーション時よりも、)減らした。(図5
そのついでに、フィルタの"構造の安定さ"を少しでも軽減する為に、GND側に銅箔を半田付けした。

これで、ほぼ望みの特性に近くなった。(のかなぁ?)(図6[クリック]
まぁ、万全ではないにしても、不要な"高域帯の信号"は、相当抑制出来るだろうと思う。

後は、これに、mixerIC 「SA602A」や「水晶発振器」などを乗せて、アルミ・ケースに入れ、「IC-820」の後部に付加出来るようにするつもり。
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[二〇二一年十月十日]
IC-820 広帯域化(2)
 アップ・コンバータ(全体)の試作

入力側に、先日試作した「ローパス・フィルタ」を入れ、先日入手したIC 「SA602A」(10個 $2.07 ¥382送料・手数料込み)と、140MHz「水晶発振器」とで、「アップ・コンバータ」を試作した。(図2[クリック]

回路は、至極標準的で、簡素なもので、その作図も随分楽だった。(図1 「bschv3」による作図)
殆どが"パス・コン"と"信号伝送用"で、手持ちの(古い)セラミック・コンデンサを使用。
電源は、本体のACCコネクタから出ている13.5Vを、3端子レギュレータ「78M05」で、+5Vに落として利用。6Vにしたかったが、「水晶発振器」の電源電圧が5Vなので、それに合わせた)

出来上がったそれを使って、「IC-820」(ICOM VHF/UHF帯通信機)で、HF帯の受信を試みた。
結果は、良好に受信出来た♪ ⇒ 動画に記録
3.5MHz、7MHz帯での受信機能は、ほゞ問題は無いようだ。まぁ、性能は不明だが。
14,21,28MHz帯は、受信信号が少ない為に、実用になる"受信性能"があるかどうかは、未だ分からない。
これは、"空のコンディション"が良くなれば、ある程度は分かって来るだろう。

尚、この「IC-820」(All Mode Transceiver)には、"AMモード"が無いので、"アップ・コンバージョン"で、"中波放送帯"や"短波放送帯"も受信出来るのだが、残念ながら、普通の聴取には向かない。

"ハムバンド"の選択は、ぐるぐるダイアルを廻さずとも、メモリに各バンドの"中心周波数"をセットしておいて、メモリを呼び出して、VFOに転送すれば、そのバンドに簡単に切り替えられる。
手順は、以下の如く。
 0.[MEMO]で、事前に、各メモリに3.5,7,14,21,28MHzの適当な周波数を保存
 1.[MEMO]でメモリ呼び出しにセット
 2.[UP/DOWN]で、メモリしたバンドを選定
 3.[FUNC]押し後に、[MEMO]を長押し(約1秒間で、周波数値を転送)
 4.[VFO]を押して、VFOに戻す

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+++ 「SA602A」は専用小基板に +++

表面実装型IC「SA602A」を使うので、当初は、"チップ・コンデンサ"などを使おうかと思ったが、"ローパス・フィルタ"を実験している段階で、従来部品を使うことに方針を替えた。(図9

ただ、「SA602A」は、「秋月電子通商」で販売されている(安価な)専用小基板を購入して使用。(AE-SOP8-DIP8 9枚¥100送料別)
これは、汎用(蛇の目)基板にマッチングするので、便利に使える。(図10[クリック]
この小基板を、汎用基板と繋ぐのには、針金などは不要で、単に細い半田線を通しておいてそれを溶融するだけで、簡単に繋げられた。

水晶発振器」には、ソケットを使用して、差し替え出来るようにした。
これは、「水晶発振器」の"活性度"と「SA602A」の"駆動能力"の"相性"が、問題になるかもしれないと思ったからだ。
が、今の処、特に個体差は感じられない。

"GND線"には、"銅箔テープ"を添わせて、半田で埋めてあるが、これは単に"気休め"。
出入り口の信号が、全部"異なる周波数"なので、相互干渉の心配は少ないから、こんなのでも構わないだろうと思っている。


+++ 外付けアダプタ +++

これ位の回路なら、更に圧縮すれば、本体内に入れられそうだが、今回は、あくまで"外付け"に拘った。
内装にすれば、コンバータ要不要の"切り替えスイッチ"などを増設しないといけないし、その場所の確保も難しい。
だが、逆に、回路を「送受信切替リレー」の後ろ(RX側)に置けば、"ウッカリ送信"で、回路を壊してしまう恐れが少なくなるのだが、今は、その"ウッカリ送信"をしないように、ひたすら心掛けなければいけない。(苦笑)

回路を入れた「アルミ・シャーシ」を、本体に半固定する為に、「SMA-Mコネクタ」(¥310税込み)を加工した。まぁ、単に、程よい長さに"先端"を切り落としただけだが。(図11
これのSMA側のネジ部を、「シャーシ」側に固定しておく。
M栓のナット部を、本体に取り付けるのは、少し狭いので、やり難いが、上下から指で廻せば、出来ないことではない。(図12[クリック]

"回路弄り”が一段落したら、後ろを「アルミ板」で蓋をする予定だが、「アルミ・シャーシ」へのネジ留めが、悩みだ。
2oφの"タップ"を買い込んで試したが、やはり、柔らかなアルミなので、直ぐにバカになってしまう。
次は、3oφへの孔の拡大だが、同じ結果になるだろう。
最後・最悪の簡単な手段は、「両面テープ」での補強か。


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